無排卵
無排卵とは
無排卵とは、女性の卵巣が正常に働かず、卵子が排出されない状態のことです。無排卵は、不妊症の原因の一つとなります。無排卵の症状、原因、診断の仕方、分類、治療法について、項目ごとに説明します。
無排卵の症状とは
無排卵の主な症状は、月経不順です。月経周期が長くなったり、短くなったり、不規則になったりします。また、月経量が少なかったり、多かったり、出血期間が長かったりします。無排卵の女性は、基礎体温が低く平坦で、高温期に移行しないことが多いです。
無排卵の原因とは
無排卵の原因は、大きく分けて内分泌系と卵巣自体の異常です。
- 内分泌系の異常では、脳下垂体や視床下部などの中枢神経系から分泌されるホルモンが正常に働かず、卵巣に対する刺激が不足するか過剰になることで無排卵を引き起こします。内分泌系の異常の原因としては、ストレスや過度のダイエット、運動不足、肥満などの生活習慣や精神的要因があります。また、甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症などの全身性の内分泌疾患や、高プロラクチン血症などの特定のホルモン異常も無排卵を引き起こす可能性があります。
- 卵巣自体の異常では、卵巣組織が正常に発育しないか退化することで無排卵を引き起こします。卵巣自体の異常の原因としては、先天的な染色体異常や遺伝的な要因があります。また、外傷や感染症などで卵巣が損傷したり、手術や放射線治療などで卵巣が切除されたりした場合も無排卵を引き起こす可能性があります。
無排卵の診断の仕方とは
無排卵の診断は、主に以下の方法で行われます。
- 基礎体温表:基礎体温表は、毎朝起床時に測定した体温を記録する方法です。基礎体温表を見ると、月経周期や排卵日などが分かります。基礎体温表で高温期が見られない場合は、無排卵の可能性が高いです。
- 尿中LH(黄体形成ホルモン)検査:尿中LH検査は、尿に含まれるLHの量を測定する方法です。LHは、卵巣から卵子が排出される直前に急激に増加するホルモンです。尿中LH検査でLHの上昇が見られない場合は、無排卵の可能性が高いです。
- 血液検査:血液検査は、血液中のホルモンや卵巣機能の指標を測定する方法です。血液検査でエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンや、FSH(卵胞刺激ホルモン)やLHなどの脳下垂体ホルモンの異常が見られる場合は、無排卵の可能性が高いです。また、甲状腺ホルモンやプロラクチンなどの他のホルモンの異常も無排卵の原因となる可能性があります。
- 超音波検査:超音波検査は、卵巣や子宮内膜の状態を画像で確認する方法です。超音波検査で卵胞の発育や排卵の有無、子宮内膜の厚さなどが分かります。超音波検査で卵胞が成熟しないか消失する場合や、子宮内膜が薄い場合は、無排卵の可能性が高いです。
無排卵の分類とは
無排卵は、その原因や症状によって以下のように分類されます。
- 一過性無排卵:一過性無排卵とは、一時的に排卵が起こらない状態のことです。一過性無排卵は、ストレスや生活習慣の変化などによって引き起こされることが多く、通常は自然に回復します。一過性無排卵は、不妊症とは関係ありません。
- 持続性無排卵:持続性無排卵とは、長期間にわたって排卵が起こらない状態のことです。持続性無排卵は、内分泌系や卵巣自体の異常によって引き起こされることが多く、治療が必要です。持続性無排卵は、不妊症の原因となります。
- 不完全無排卵:不完全無排卵とは、周期的に排卵が起こるものの、その質や量が不十分な状態のことです。不完全無排卵は、内分泌系や卵巣自体の異常によって引き起こされることが多く、治療が必要です。不完全無排卵は、不妊症や流産の原因となります。
無排卵の治療法とは
無排卵の治療法は、その原因や目的によって以下のように続きます。
無排卵の治療法は、その原因や目的によって異なりますが、一般的には以下のような方法があります。
- ホルモン補充療法:ホルモン補充療法とは、無排卵の原因となるホルモンの不足や過剰を調整するために、外からホルモンを投与する方法です。ホルモン補充療法には、経口薬や注射剤などがあります。ホルモン補充療法の目的は、月経周期を正常化し、排卵を促すことです。ホルモン補充療法は、内分泌系の異常や不完全無排卵に有効です。
- 卵胞刺激剤:卵胞刺激剤とは、卵巣に対して直接的に刺激を与えて、卵胞の発育と排卵を促すために、外からFSHやLHなどの脳下垂体ホルモンを投与する方法です。卵胞刺激剤には、経口薬や注射剤などがあります。卵胞刺激剤の目的は、妊娠を希望する女性に対して、排卵を確実にさせることです。卵胞刺激剤は、内分泌系の異常や不完全無排卵に有効ですが、過剰投与すると多嚢胞性卵巣症候群や多胎妊娠などの副作用が起こる可能性があります。
- 手術:手術とは、無排卵の原因となる卵巣や子宮などの器官の異常を除去する方法です。手術には、腹腔鏡や子宮鏡などの内視鏡を用いた方法や、開腹手術などがあります。手術の目的は、器官の機能を回復し、排卵を可能にすることです。手術は、卵巣自体の異常や子宮内膜症などに有効ですが、合併症や再発のリスクがある場合もあります。
無排卵は不妊症の原因となる可能性が高いため、月経不順や基礎体温表の異常などがある場合は、早めに医師に相談することが大切です。無排卵の治療法は個人差がありますが、適切な方法を選択すれば妊娠の可能性は高まります。
無排卵に効く中医学的な療法と養生法
無排卵の中医学的な原因とは
無排卵の原因は、西洋医学では内分泌系や卵巣自体の異常とされますが、中医学では主に以下の三つの体質に分類されます 。
-気血両虚(きけつりょうきょ):気と血の不足による体力低下や栄養不良が原因で、卵子の成熟や排卵を妨げます。気血両虚の女性は、貧血やめまいなどの症状があります。
-気滞血瘀(きたいおけつ):ストレスや感情の抑圧などによる気の滞りや血行不良が原因で、卵巣や子宮に瘀血(おけつ)が溜まります。気滞血瘀の女性は、生理痛や月経前症候群(PMS)などの症状があります。
- 腎虚(じんきょ):年齢や遺伝などによる腎の機能低下が原因で、女性ホルモンの分泌や卵巣機能が低下します。腎虚の女性は、冷えや不妊などの症状があります。
無排卵の中医学的療法とは
無排卵の中医学的療法は、その体質や目的に応じて漢方薬や温灸などを用います。漢方薬は内服することで体内からバランスを整えます。鍼灸は皮膚や筋肉に刺激を与えることで気血の流れを改善します。中医学的療法の目的は、月経周期を正常化し、排卵を促すことです。中医学的療法は、内分泌系や卵巣自体の異常に対しても有効です。
無排卵の代表処方とは
無排卵の代表処方は、以下のようになります 。
- 血虚タイプ:血を補う漢方薬を用います。代表的なものは、婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)、四物湯(しもつとう)などです。
- 肝鬱気帯タイプ:気と血の滞りを解消する漢方薬を用います。代表的なものは、逍遥散(しょうようさん)です。
- 肝腎陰虚:腎を補う漢方薬を用います。代表的なものは、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)などです。
無排卵の養生法とは
無排卵の養生法は、以下のようになります 。
- 血虚タイプ:栄養バランスの良い食事を摂り、適度な運動や休養をとります。貧血や疲労に注意し、暖かくして冷えを防ぎます。赤身肉やレバー、ほうれん草などの血を補う食材や、大豆製品やナッツ類などの気を補う食材がおすすめです。
- 疎肝化鬱タイプ:ストレスを溜めないように心身ともにリラックスします。マッサージやヨガなどで血行を促進し、瘀血を排出します。辛いものや油っこいものは控えめにし、柑橘類やハーブティーなどの気と血の流れを良くする食材がおすすめです。
-腎虚:睡眠不足や過度な性行為は控えます。冷たいものや生ものは避け、温かいものや煮込み料理などを摂ります。黒豆や黒ゴマ、海草類や貝類などの腎を補う食材がおすすめです。
無排卵に役に立つ話とは
無排卵に悩む女性にとって、役に立つ話としては以下のようなものがあります。
- 無排卵は不妊症の原因となる可能性が高いため、月経不順や基礎体温表の異常などがある場合は、早めに医師に相談することが大切です。無排卵の治療法は個人差がありますが、適切な方法を選択すれば妊娠の可能性は高まります。
- 無排卵はホルモン剤を投与するとほとんどが排卵を始めるので、西洋医学での検査や治療が主流になっています。しかし、無排卵になる原因そのものを根本的に改善しないと、身体全体の健康が整っているわけではありません。そのため、ホルモン
漢方薬の服用をご希望される場合、その方の体質によって種類が異なることがありますので薬局でご相談ください。