熱中症

熱中症の女性

熱中症予防のために知っておきたいこと

熱中症とは

熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指します。屋外だけでなく室内で何もしていないときでも発症し、救急搬送されたり、場合によっては死亡することもありますので、その場の判断がとても重要です。迷ったら救急車を呼ぶか、病院の受診をオススメします。

黒板とパンダ

熱中症予防のための中医学的な知識と対策

熱中症の原因と中医学的な見方

熱中症の原因は、主に以下の3つです

  • 暑さ:気温が高いと、体から熱がうまく逃げなくなります。特に直射日光や反射熱に当たると、体温が急上昇します。
  • 湿度:湿度が高いと、汗が乾きにくくなります。汗は乾くときに体から熱を奪うので、乾かないと体温調節ができません。
  • 水分・塩分の不足:汗をかくと水分や塩分が失われます。水分や塩分が不足すると、血液の量や循環が低下し、体温調節や臓器の働きが悪くなります。

中医学では、暑さは外邪(外から侵入する邪気)の一種であり、人体の陰液(水分や血液など)を消耗し、陽気(エネルギー)を亢進させると考えます³。湿度は湿邪(水分代謝を阻害する邪気)の一種であり、人体の気血(エネルギーと血液)の流れを滞らせると考えます⁴。水分・塩分の不足は陰液の枯渇や気血の虚弱を招きます。

これらの要因によって、人体は以下のような不調を起こします。

  • 暑邪:暑さによって陽気が亢進し、心神(精神活動)を乱す。意識障害や錯乱、頭痛や吐き気などが起こる。
  • 湿邪:湿度によって気血の流れが滞る。だるさや倦怠感、筋肉のけいれんやしびれなどが起こる。
  • 陰液枯渇:水分・塩分の不足によって陰液が消耗する。口渇や乾き目、皮膚の乾燥や発汗不良などが起こる。
  • 気血虚弱:水分・塩分の不足によって気血が減少する。めまいや動悸、息切れや貧血などが起こる。

熱中症の診断の仕方と中医学的な診断法

熱中症の診断は、主に以下の2つのポイントで行います。

  • 体温:体温計で測るか、手で触ってみて高いかどうか判断します。一般的には37.5℃以上が目安です。
  • 意識:声をかけてみて反応があるかどうか判断します。一般的には意識障害や錯乱がある場合は重症です。

中医学では、熱中症の診断には四診(望診・聞診・問診・切診)を用います。

  • 望診:顔色や舌苔、皮膚の状態などを観察します。顔色が赤く、舌苔が黄色く、皮膚が乾燥している場合は暑邪が強いと判断します。顔色が青白く、舌苔が白く、皮膚が湿っている場合は湿邪が強いと判断します。
  • 聞診:声や呼吸音、心音などを聴きます。声が高く、呼吸音や心音が早くて強い場合は陽気が亢進していると判断します。声が低く、呼吸音や心音が遅くて弱い場合は陰液や気血が不足していると判断します。
  • 問診:自覚症状や発症の経過などを尋ねます。頭痛や吐き気、めまいなどの神経系の症状がある場合は心神が乱れていると判断します。だるさや倦怠感、筋肉のけいれんやしびれなどの筋肉系の症状がある場合は気血の流れが滞っていると判断します。
  • 切診:手首の脈を触ってみます。脈が速くて強い場合は陽気が亢進していると判断します。脈が遅くて弱い場合は陰液や気血が不足していると判断します。

熱中症の分類と中医学的なタイプ

熱中症は、軽い方からⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度と3段階に分けて判断します¹。

  • Ⅰ度:軽度の脱水や塩分不足で起こるもので、手足のしびれや筋肉のけいれんなどがあります。意識は普通です。
  • Ⅱ度:中等度の脱水や塩分不足で起こるもので、頭痛や吐き気、めまいなどがあります。意識はぼんやりしています。
  • Ⅲ度:重度の脱水や塩分不足で起こるもので、意識障害やショックなどがあります。意識は混濁しています。

熱中症の分類と中医学的なタイプ

熱中症は、軽い方からⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度と3段階に分けて判断します。

  • Ⅰ度:軽度の脱水や塩分不足で起こるもので、手足のしびれや筋肉のけいれんなどがあります。意識は普通です。
  • Ⅱ度:中等度の脱水や塩分不足で起こるもので、頭痛や吐き気、めまいなどがあります。意識はぼんやりしています。
  • Ⅲ度:重度の脱水や塩分不足で起こるもので、意識障害やショックなどがあります。意識は混濁しています。

中医学では、熱中症は暑邪と湿邪が人体に侵入し、陰液と気血を消耗することで起こると考えます。暑邪と湿邪の強さや陰液と気血の不足の程度によって、以下のようなタイプに分けられます 。

  • 暑邪亢進型:暑邪が強く、陽気が亢進し、心神を乱すタイプです。顔色が赤く、体温が高く、意識障害や錯乱などがあります。熱射病(Ⅲ度)に相当します。
  • 湿邪滞留型:湿邪が強く、気血の流れが滞るタイプです。顔色が青白く、体温は正常か低いく、だるさや倦怠感などがあります。熱失神(Ⅰ度)に相当します。
  • 陰液枯渇型:水分・塩分の不足によって陰液が枯渇するタイプです。口渇や乾き目、皮膚の乾燥や発汗不良などがあります。熱疲労(Ⅱ度)に相当します。
  • 気血虚弱型:水分・塩分の不足によって気血が虚弱するタイプです。めまいや動悸、息切れや貧血などがあります。熱痙攣(Ⅰ度)に相当します。

熱中症予防のための代表処方、養生法、役に立つ話

熱中症の代表処方

熱中症は、暑邪と湿邪が人体に侵入し、陰液と気血を消耗することで起こると考えます。そのため、暑邪と湿邪を除き、陰液と気血を補うことが治療の基本です。中医学では、熱中症のタイプに応じて以下のような代表処方があります。

  • 暑邪亢進型:清暑益気湯(せいしょえききとう)が用いられます。これらは暑邪を清め、気血を補い、心神を安定させる作用があります。
  • 湿邪滞留型:勝湿顆粒(しょうしつかりゅう)や五苓散(ごれいさん)などが用いられます。これらは湿邪を除き、気血の流れを促す作用があります。
  • 陰液枯渇型:麦味参(ばくみさん)が用いられます。これらは陰液を生じ、体温を下げる作用があります。
  • 脾気虚弱型:健胃顆粒(けんいかりゅう)が用いられます。これらは脾を補い、臓器の働きを強化する作用があります。

熱中症の養生法

熱中症の予防や回復には、日常生活での養生法も重要です。以下のような点に注意しましょう。

  • 暑さを避ける:日陰やエアコンの効いた涼しい場所で休むことが基本です。外出するときは帽子や日傘を使って直射日光を避けましょう。室内では遮光カーテンやすだれ、打ち水などで日差しや反射熱を減らしましょう。
  • 服装に工夫する:通気性のよい、吸湿性・速乾性のある衣服を着用しましょう。黒色系のものは輻射熱を吸収するので避けましょう。襟元は緩めて風が通りやすくしましょう。
  • 水分・塩分・糖分を補給する:喉が渇く前にこまめに水分・塩分・糖分を補給しましょう。水やスポーツドリンク、経口補水液などがおすすめです。果物や野菜も水分やミネラルの補給に役立ちます。
  • 睡眠や栄養に気をつける:睡眠不足や栄養不足は体温調節機能を低下させます。十分な睡眠とバランスのよい食事を心がけましょう。特にビタミンB群やビタミンCは発汗によって失われやすいので、積極的に摂りましょう。
  • 運動や就労の前後に水分を摂る:運動や就労は発汗量が増えるので、前後に水分を摂ることが大切です。運動や就労中は、15分から30分ごとに休憩を取り、水分・塩分・糖分を補給しましょう。

熱中症予防のための役に立つ話

熱中症予防のためには、自分の体調や周囲の環境に気を配ることが重要です。以下のような話が役に立つかもしれません。

暑さ指数(WBGT)暑さ指数(WBGT)とは、気温だけでなく湿度や日射量なども考慮した指標で、熱中症の危険度を示します。暑さ指数が28℃以上になると熱中症のリスクが高くなります。環境省では、暑さ指数の予報や注意報を発表しています。暑さ指数をチェックして、外出や運動の計画を立てましょう。

冷たい飲み物は注意:暑い日には冷たい飲み物が飲みたくなりますが、注意が必要です。冷たい飲み物は胃腸の働きを低下させ、消化不良や下痢を引き起こすことがあります。また、冷たい飲み物を大量に飲むと胃痙攣が起こることもあります。冷たい飲み物はストローを使用し少しずつ飲むか、常温かぬるま湯で割って飲むようにしましょう。

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