帯状疱疹後の神経痛

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帯状疱疹後の神経痛とは?

帯状疱疹後の神経痛とは、帯状疱疹による水疱などの皮疹が治った後も、激しい痛みが持続する難治性の神経因性疼痛です。帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症で、一度水ぼうそうにかかった人の体内に潜伏しているウイルスが再活性化することで発生します。この記事では、帯状疱疹後の神経痛の原因、診断方法、分類、治療法について、なるべくわかりやすく解説します。

帯状疱疹後の神経痛の原因

帯状疱疹後の神経痛は、帯状疱疹によって感染したウイルスが神経細胞を傷つけることで起こります。ウイルスは皮膚の感覚を伝える末梢神経から脊髄や脳幹にある感覚神経節まで遡ります。感覚神経節では、ウイルスは神経細胞の核に入り込み、DNAを変化させて細胞分裂を促進します。この過程で、神経細胞は機能不全や死滅を起こし、神経伝達物質や受容体の異常な発現や感受性が生じます。これによって、本来ならば無害な刺激でも強い痛みとして感じるようになります。この現象を中枢性過敏と呼びます。

帯状疱疹後の神経痛の診断方法

帯状疱疹後の神経痛は、主に以下の3つのポイントで診断されます。

- 帯状疱疹の発症後、3ヶ月以上痛みが持続すること
- 痛みが帯状疱疹の発症部位に限局すること
- 痛みの性質が神経因性疼痛と一致すること

神経因性疼痛とは、神経の障害や刺激によって引き起こされる特徴的な痛みです。神経因性疼痛の症状は、以下のようなものがあります。

  • 焼けるような痛みや電気が走るような痛み
  • 触れるだけで痛む(触覚過敏)
  • 熱や冷たさに過敏に反応する(温度過敏)
  • 無関係な刺激で痛む(異種過敏)
  • 痛みが拡散する(拡散性過敏)

帯状疱疹後の神経痛の診断には、患者さんの自覚症状や医師による触診や神経学的検査などが用いられます。また、ヴァス・ペイン・スケールやマクギル・ペイン・クエスチョナリーなどの評価尺度を用いて、痛みの強さや性質を客観的に測定することもあります。

帯状疱疹後の神経痛の分類

帯状疱疹後の神経痛は、発生時期や持続期間によって以下のように分類されます。

  • 急性期:帯状疱疹の発症から30日以内に発生する神経痛。水疱や皮膚の炎症とともに出現します。約80%の患者さんが経験します。
  • 亜急性期:帯状疱疹の発症から30日から90日以内に発生する神経痛。水疱や皮膚の炎症は治まっていますが、まだ神経が回復していないために痛みが残ります。約20%の患者さんが経験します。
  • 慢性期:帯状疱疹の発症から90日以上経過しても治らない神経痛。中枢性過敏が起こっているために、神経が正常に戻っても痛みが消えません。約10%の患者さんが経験します。
  • 帯状疱疹後の神経痛の発生率や持続期間が高くなる傾向にあります。また、帯状疱疹の発症から早期に抗ウイルス薬や神経因性疼痛に効果的な薬物治療を開始することで、帯状疱疹後の神経痛の予防や軽減につながる可能性があります。

帯状疱疹後の神経痛の治療法

帯状疱疹後の神経痛の治療法は、以下のようなものがあります。

帯状疱疹後の神経痛の治療法は、薬物療法と理学療法を組み合わせた治療が一般的です。薬物療法では、抗てんかん薬や抗うつ薬などの神経障害性疼痛に効果的な薬を服用します。理学療法では、温冷刺激や電気刺激などを用いて、神経の伝達を調節し、痛みを和らげます。

また、帯状疱疹後の神経痛を予防するためには、帯状疱疹の発生時に早期に治療を開始することが重要です。局所麻酔薬で一時的に神経を休ませる神経ブロック療法は、発疹や水泡の治癒を早め、帯状疱疹後の神経痛への移行を防止するのに非常に有効です。

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帯状疱疹後の神経痛について中医学的アプローチ

繰り返しになりますが、帯状疱疹後の神経痛は、帯状疱疹が治った後も続く神経の痛みで、西洋医学では薬物療法や神経ブロックなどが行われますが、中医学的な観点からも治療が可能です。

中医学では、帯状疱疹後の神経痛は、水痘・帯状疱疹ウイルスによる邪気が血経を傷つけて血の流れを阻害し、血の不通によって生じる「血瘀」によるものと考えます。そのため、血行を改善し、血瘀を除去することが治療の基本となります。

代表的な漢方処方としては、桂枝加朮附湯ブシ末があります。桂枝加朮附湯は温経散寒・活血化瘀・利水温肺の作用があります。ブシ末は、通経止痛・利尿消腫の作用があります。これらの漢方薬は、帯状疱疹後の神経痛に対して鎮痛作用や水分調整作用などを発揮し、臨床試験でも有効性が示されています。

養生法としては、冷えや湿気に注意し、温かく乾いた服装を心がけることが大切です。また、ストレスや過労を避け、規則正しい生活を送ることも重要です。食事では、辛いものや刺激物は控えめにし、栄養バランスの良い食事を摂ることが望ましいです。

帯状疱疹後の神経痛は、患者さんの体質や証候によって適切な漢方処方が異なります。自分に合った漢方薬を見つけるためには、漢方専門薬局に相談することがおすすめです。

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