黄体機能不全

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黄体機能不全とは?

黄体機能不全とは、排卵後に形成される黄体が十分なホルモンを分泌しないため、子宮内膜が正常に発達しない状態のことです。妊娠を維持するために必要なプロゲステロンが不足すると、流産や不妊の原因になる可能性があります。

黄体機能不全の症状とは?

黄体機能不全の主な症状は、月経周期の乱れです。特に、月経前期が長くなる(排卵が遅れる)、月経後期が短くなる(生理が早く来る)、月経量が少ない(スポッティングや茶色のおりもの)、月経が来ない(無排卵や無月経)などがあります 。また、黄体機能不全は不妊の原因となることもあります。

黄体機能不全の原因とは?

黄体機能不全の原因は、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌不足です。プロゲステロンは、子宮内膜を厚くして受精卵の着床を促す役割を果たします。プロゲステロンの分泌不足は、以下のような要因によって引き起こされることがあります 。
排卵障害:卵巣から卵子が放出されない場合、黄体が形成されず、プロゲステロンが分泌されません。排卵障害は、ストレス、過度なダイエット、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などによって起こることがあります 。

黄体形成障害:卵子が放出されても、黄体が正常に形成されない場合、プロゲステロンの分泌量が不足します。黄体形成障害は、高プロラクチン血症、甲状腺機能異常、自己免疫疾患などによって起こることがあります 。

黄体分解障害:黄体が正常に形成されても、早期に分解される場合、プロゲステロンの持続時間が不足します。黄体分解障害は、高エストロゲン血症、低リューティニングホルモン(LH)血症などによって起こることがあります 。

黄体機能不全の診断の仕方とは?

黄体機能不全の診断は、以下のような方法で行われます 。

基礎体温測定:基礎体温は、排卵後に上昇し、生理前に下降するというパターンを示します。基礎体温を毎日測定することで、排卵の有無や時期を判断することができます。基礎体温が上昇しない場合や上昇期間が10日未満の場合、黄体機能不全の可能性があります 。

血液検査:血液中のホルモンの濃度を測定することで、黄体機能不全の原因を特定することができます。特に、プロゲステロン、エストロゲン、LH、プロラクチン、甲状腺ホルモンなどの値が重要です 。

超音波検査:超音波検査は、卵巣や子宮の状態を観察することができます。卵胞の発育や排卵の確認、黄体の形成や分解の評価などが行われます 。

黄体機能不全の分類とは?

黄体機能不全は、以下のように分類されます 。

初発性黄体機能不全:排卵障害や黄体形成障害によって起こる黄体機能不全です。卵巣から十分なプロゲステロンが分泌されないため、子宮内膜が十分に成熟しません。この場合、妊娠はほとんど起こりません 。

二次性黄体機能不全:黄体分解障害によって起こる黄体機能不全です。卵巣から十分なプロゲステロンが分泌されても、子宮内膜が早期に剥がれてしまいます。この場合、妊娠は起こりやすいですが、流産のリスクが高くなります 。

黄体機能不全の治療法とは?

黄体機能不全の治療法は、原因に応じて異なりますが、以下のような方法があります 。
ホルモン補充療法:プロゲステロンやエストロゲンなどのホルモンを補充することで、子宮内膜の成熟や保持を促進します。ホルモン補充療法は、経口剤や注射剤、貼付剤などの形で行われます 。

排卵誘発剤:クロミッドやゴナドトロピンなどの薬剤を用いて、卵巣から卵子を放出させることで、黄体を形成させます。排卵誘発剤は、経口剤や注射剤の形で行われます 。

生活習慣の改善:ストレスや過度なダイエットなどは、排卵障害や黄体機能不全を引き起こす可能性があります 。そのため、適度な運動や睡眠、栄養バランスの良い食事などを心がけることが重要です

※黄体機能不全に悩む女性は、早めに専門医に相談しましょう!可能であれば中医学的療法も併用する事をおすすめします。

黄体機能不全と漢方

黄体機能不全の中医学的療法

中医学では、黄体機能不全という言葉はありませんが、近年の研究において「腎虚」が主たる原因であり特に「腎陽虚」が多く見られます。腎の力が弱いと、卵胞がうまく育たず、黄体の働きも低下しやすくなります。基礎体温も全体的に低く、高温期が維持できず10日以内で終わってしまうことが多いです。また、血が不足して冷えやすく、血行もよくない状態がみられます。この状態では、受精卵にとって居心地のよいフワフワした厚い子宮内膜ができず、着床しにくくなります。

中医学的療法では、腎のはたらきを高め、子宮の冷えや血不足を改善する鹿茸(鹿のやわらかい角)や亀甲・鼈甲・鹿角などの動物生薬を使った漢方をよく用います。漢方薬では、これらの生薬を使った参茸補血丸・亀鹿仙があります。さらに、高温期にイライラや胸張り、お腹や脇の張りなど不快な症状が起こりやすい方、血中プロラクチン値が高い方は、自律神経と関係の深い「肝」の気が停滞して、「肝鬱」の状態になりやすく、黄体機能不全にも影響します。このような方の基礎体温は高温期がギザギザに波打つ傾向があります。漢方薬では、疏肝理気の逍遙散や炒麦芽(炒った麦芽)などを用います。その他、血の巡りがよくない「瘀血」や胃腸のはたらきが低下した「脾虚」なども黄体機能不全の原因になっていることが多くみられます。これらの体質をひとつひとつ改善していくことが、黄体機能不全の改善には大切だと考えます。

黄体機能不全の方に役に立つ話

冷えを避ける:冷たい食べ物や飲み物は控えるようにしましょう。特に生理前後は子宮が冷えやすいので注意してください。また、足元やお腹を冷やさないように暖かい靴下や腹巻を着用するとよいでしょう。
ストレスを溜めない:ストレスは自律神経やホルモンバランスに悪影響を与えます。リラックスできる趣味や運動、呼吸法などを取り入れて、心身の緊張をほぐしましょう。
質のよい睡眠をとる:睡眠不足は免疫力や代謝を低下させます。22時から2時までの間に眠ることが理想的です。寝る前にはスマホやテレビなどの刺激を避けて、暗く静かな環境で眠りにつきましょう。
バランスのよい食事をとる:栄養素の偏りや偏食は体調を崩しやすくします。特にタンパク質や鉄分、ビタミンB群などは女性ホルモンの生成に必要です。肉や魚、卵、豆類、野菜、果物などをバランスよく摂取しましょう。

以上が、黄体機能不全についての中医学的な見方と対策です。黄体機能不全は体の不調のサインなので、無視せずに自分の体質に合った方法でケアしていきましょう。

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